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コスプレは自作衣装でも著作権侵害?私的使用のライン引き

「公式ではない既製品衣装は著作権侵害をしているけれど、自作衣装なら何をしても大丈夫!」……そう考えている方は少なくないと思います。

なんとなく、個人的にコスプレを楽しむだけなら「私的使用」に当てはまるから法律には触れない、という認識は広まっていますが、具体的にどこまでが「私的使用」になるかご存知ですか?

今回は、無意識の内に著作権侵害をしないよう、自作のコスプレ衣装と著作権について私の考えをまとめて記事にしました。

  1. コスプレ衣装を「自作するだけ」なら「私的使用」に当てはまる可能性大
  2. 自作衣装を使用して何をすると著作権侵害になる?
    1. ケース1:自作衣装でのコスプレ写真を、写真集・ROMにして頒布
    2. ケース2:不要になった自作のコスプレ衣装を有償・無償問わず譲渡
    3. ケース3:自作衣装を着用して写真撮影をして、ネットで写真を公開
  3. 著作権違反をしている人が訴えられない理由

コスプレ衣装を「自作するだけ」なら「私的使用」に当てはまる可能性大

以前、業者製衣装の違法性について書いた「そのコスプレ衣装、著作権侵害品かも?「業者製」の違法性」という過去記事でも触れましたが、コスプレ衣装の製作は著作権の中の「複製権」を侵害している可能性がある、と考えられています。

複製権とは、その名の通り「作品を複製する権利」です。作品の複製の権利は、その作品の著作者が専有しています。著作者しか複製を行えないのです。

作品の中のキャラクターの衣装も著作物と捉えると、それを勝手に製作(複製)している自作派コスプレイヤーも複製権を侵害している、ということになります。

しかし、作品の複製は「私的利用目的であれば著作者の許諾なしに複製可能」と著作権法第30条に定められています。

「コスプレ衣装製作の会社を作ってお金儲けしているわけじゃないから、きっと自分がやっていることは大丈夫」

そんな風に思っていても、実は思わぬところで「私的利用」の範疇を超えてしまっている可能性があります。

自作衣装を使用して何をすると著作権侵害になる?

会社を作ってコスプレ衣装の製作・販売を行う、というのは私的利用の範疇を超え、複製権を侵害しているということはお分かり頂けたかと思います。

しかし実はそれ以外にも、私たちコスプレイヤーが当たり前のように行っている行為が、法律の解釈の仕方によっては私的使用に当てはまらない場合もあるのです。

いくつか例を出して、どのような行為が違法行為となる可能性があるのかを確認していきましょう。

ケース1:自作衣装でのコスプレ写真を、写真集・ROMにして頒布

これは「その衣装を着用して写真撮影を行い、その写真を他者に頒布すること」が目的になってしまっているので、私的利用の範疇を超えていると言えます。

利益が出ていないからいい、赤字だからいい、という訳ではありません。写真集やROMとして写真を頒布することが目的、という時点で充分アウトなのでご注意下さい。

ケース2:不要になった自作のコスプレ衣装を有償・無償問わず譲渡

作った衣装を処分する際に、捨てるのではなくアーカイブのフリマで他人に譲渡するのも私的利用目的ではなくなると言えてしまいます。

私的使用はあくまで「自分楽しむこと」を目的とした製作です。他人がその衣装に袖を通した瞬間に、自分以外の人が使用=私的使用の範囲外、と解釈できます。

こちらも写真集やROM同様、無償だからOKということにはなりません。譲り受けるのではなく貸し出す行為もアウトだと考えてよいでしょう。

ケース3:自作衣装を着用して写真撮影をして、ネットで写真を公開

実は、自作衣装を着用して撮影したコスプレ写真をネットで公開することさえも私的利用の範囲に当てはまるかどうかかなり危ういところです。

写真の公開も写真集やROMの時と同様、ネットに公開=他人に見せることを目的に製作、と捉えられてしまうと私的利用では留まらなくなってしまいます。

人に見てもらいたい気持ちもあるけれど、どちらかというと記録感覚で公開しているだけ……という方が多いかと思いますが、法律の解釈の仕方によっては写真の公開さえも危ういと言えます。



以上、コスプレイヤーにとっては当たり前とも思えるいくつかのケースについてまとめてみました。

ご紹介したケースは、法律の解釈の仕方によってはグレー止まりだったりクロだったりと様々です。

今回は、全てのコスプレイヤーさんに自分の行為を振り返って欲しくてかなり厳しく脅しつけるように記事を書きましたが、人によっては「そもそも複製権は作品そのものが対象であって、作品に登場するキャラクターの衣服は対象外なのでは」と考える方もいらっしゃいます。(これはちょっとどうなんだろうと私は思いますが)

実際に権利についてどうなるかは、裁判にならないことには分かりません。

しかし、コスプレを楽しむのであればこの件についてご自身の意見を持って欲しいと思います。是非、著作権法の複製権についての項目を読んで自分なりに解釈してみて下さい。



さて、ご紹介した行為について、実は複製権侵害(かもしれない)ということが分かりましたが、このような行為をしている人は決して少なくありません。写真の公開に至っては、ほとんどのコスプレイヤーがしています。

なぜ複製権を侵害している(可能性がある)にも関わらず、著作者から提訴されないのでしょうか。その理由を考えてみましょう。

著作権違反をしている人が訴えられない理由

二次創作や同人誌の世界ではよく「権利者からお目こぼしを頂いている」「二次創作が盛り上がると元の作品も盛り上がる=売上が上がるから」と言われていますね。

コスプレイヤーが提訴されないのも、コスプレが二次創作の一部としてファンたちを盛り上げる一部となれているから、というのも、もちろん理由の一つとしてあると思います。

しかし個人的には、コスプレイヤーの行うことのほとんどが版権元の販売物との競合性がないからという点も強いのではないかと思います。

例えばコスプレROM販売の利益が100万あろうが、版権元が販売する商品の中にはコスプレROMに相当するものは(ほとんどの場合)ないので目を瞑ろう、という可能性もなきにしもあらずと思います。

また、コスプレイヤー一人ひとり潰していくとその作品のファン全体の空気がピリピリしてしまい、twitterで学級会が開かれ、ファンは別の楽しい作品へ移り……となりかねません。

そういった意味合いもありコスプレイヤーの活動は見逃してもらえているのだと思います。

しかし、例えば公式衣装が販売されているキャラクターの衣装を製作し販売・譲渡することは営業妨害にもなってしまいます(し、複製権侵害です)ので、「個人だからセーフ」と思わず踏みとどまって下さればと思います。

まとめ

  • 自作衣装を自分で着るのであれば「私的使用」の範囲内
  • 自作衣装使ってROM製作、衣装を譲渡、コスプレ写真の公開も複製権侵害の可能性あり
  • 著作権侵害行為をしていても提訴されないのは版権元と競合していないから?

以上、自作コスプレ衣装と著作権についてまとめてみました。

「私的利用」の範囲がどこまでかは人の解釈によります。私は自分の身かわいさにかなり厳しめに考えていますが、この考え方が一般的とは限りません。

是非この記事を鵜呑みにするのではなく、この記事をきっかけに自分で著作権とコスプレについて考えてみて頂ければと思います。