
「どうしてもコスプレしたいキャラがいるけれど、既製品のコスプレ衣装が売っていない! 自作したいけど、洋裁の本は難しそうだから心配……」
コスプレを始めたばかりの筆者はそんな悩みを抱えながら、好きなキャラのコスプレをずっと保留にしていました。
そんな筆者がコスプレ衣装の自作に乗り切ったきっかけは、コスプレ衣装製作雑誌でした。一冊買ってパラパラめくってみると、初心者向けに工程が細かく解説されていて、自分でもできるかも……とやる気になったのです。
今回は、「コスプレ衣装を自作したいけど何も分からないから、とりあえず本を買いたい!」という方に向けて、初心者におすすめの本や衣装の作り方の流れについてまとめてみました。
- 衣装製作初心者におすすめのコスプレ衣装製作本や雑誌はどれ?
- 本を買ったら、次は何をする?コスプレ衣装の作り方
- 一番初めにすべきことは「デザイン把握」
- デザインを覚えたら、次は「構造」を考えよう
- 構造が決まったら、いよいよ「型紙」の準備!
- 自分のイメージにあわせて「布を調達」しよう
- 裁断したらいざ縫合!……の前に「接着芯貼り」と「模様入れ」
- 構造を頭に浮かべながら縫い合わせていく
- 衣装製作で行き詰まった!こんな時はどうすればいい?
衣装製作初心者におすすめのコスプレ衣装製作本や雑誌はどれ?
初心者が持つべきコスプレ衣装製作本はこれです! ……とご紹介できればよいのですが、コスプレ衣装製作本は人それぞれ合う合わないがあります。
道具の揃え方・使い方、洋裁の基本などはどの本にもしっかり掲載されていることが多いのですが、それ以外の要素は本によって少しずつ違いがあるのです。
最終的には自分で合う合わないを判断しなければならないのですが、目安として、
- 今すぐ欲しい型紙が付録になっているか
- 製作イメージの写真が載っているか
以上の点に注目して選ぶことをおすすめします。
なぜこういった点に注意すべきなのか、一つ一つ解説していきます。
今すぐ作りたい衣装に近い型紙が載っているものがおすすめ
初めてコスプレ衣装製作本を買うのであれば、直近で作る予定のある衣装に使える型紙が付録になっている本がおすすめです。
自作が全くの初めての時は、型紙の改造はできるだけ最小限に納めたいですよね。
「ダブルボタンのジャケットを作るけれど、シングルボタンのジャケットの型紙の方が万能そうだから……」と考えてしまいますが、全くの初心者の内からそんなことを考えると痛い目を見ます。ソースは私です。
「ずっと使っていける本が欲しい!」「色んな型紙がついている本が欲しい!」と思う気持ちはよく分かります。
しかし、型紙の数が多くとも、色々なタイプの型紙が付属していようとも、結局のところ将来的にその型紙を使うかどうかは運になってしまいます。
「何にでも使える本」を買っても「イマイチ何にも使えない本」になってしまうかも
筆者はコスプレを始めたばかりの頃、とりあえず付録の型紙が多い本(20パターン以上)を選んで購入したのですが、結局その本の付録の型紙を活用できたのは、買った数年後に2~3回だけでした。
テーラードジャケット、詰襟軍服、ジャージ、スラックス……いかにもコスプレに役立ちそうな型紙が揃っていたので絶対に失敗しないと思っていました。
しかし、いざコスプレ衣装の自作を始めてみると作っているのはナポレオンジャケット、和服、忍者装束、ロングコート、野球ユニフォーム……微妙に全部ズレていたのです。
こういった経験があるので、使うかどうかも分からない大量の型紙より、今すぐ使いたい一枚の型紙がついている本をおすすめしています。
さて、自分の使いたい型紙が付属している本を……と言いましたが、場合によっては「どの本にも欲しい型紙がついている!」という状況になるかもしれません。
そんな時は、型紙で製作した衣装のサンプル写真があるかどうかをチェックしてみましょう。
その型紙で作ったサンプル写真がある本を買おう
型紙だけが付いていたり、製作イメージがイラストの本よりも、サンプルの写真がしっかり掲載されている本がおすすめです。
型紙のみの場合は論外ですが、イメージイラストが掲載されていてもいざ作ってみたらイラストと全然デザインが違う……なんて(信じられない)こともあり得てしまうのです……。
製作イメージ写真が掲載されていて、おすすめのコスプレ衣装製作本をいくつかピックアップしてみました。
この中から、自分が今すぐ使いたい型紙が掲載されている本があればそちらの購入を検討してみてはいかがでしょうか。(絶対に使えると補償はできませんが!)
特徴的な型紙:肩出しワンピ、ナポレオンカラージャケット、レオタード
特徴的な型紙:変形チャイナドレス(胸あき)、ショート丈着ぐるみ、水干
特徴的な型紙:ハイウエストプリーツスカート、漢服
自分に合った本は見つけられましたでしょうか。参考になる本が買えたら、次のステップに進みましょう!
本を買ったら、次は何をする?コスプレ衣装の作り方
コスプレ衣装製作の参考書が手に入ったら、いざ衣装製作! ……といきたいところですが、初めて作るとなると何から始めたらよいか分かりませんよね。
こういった本は、その型紙のデザインの服そのままを作ることを前提としていますが、コスプレ衣装として作る場合はどこかしら多少のアレンジをすることがほとんどです。
型紙の通りに作らない場合は、本の通りに作るわけにもいきませんよね。今回は、型紙通りに作らない場合の大まかな作り方の流れをまとめてみました。
一番初めにすべきことは「デザイン把握」
最も大切なのは、これから作る衣装のデザインを細部までしっかり把握することです。
キャラクターの衣装のフロント・バックはもちろん、コートの裏地の色なども見えるのであればしっかり把握しておくことが大事です。
公式資料集などでデザインの詳細が公開されている場合はそのイラストを印刷するなりスマホに入れるなりして常に見られるようにすればOKです。
そういった詳細資料がない場合は、大げさと思うかもしれませんが自分でデザイン画を描き起こすのがおすすめです。
自分でデザイン画を描くと、必要な情報が一枚にまとまるだけでなく、描くことでデザインが頭の中にしっかりと刻み込まれるので暗記できるという利点もあります。
公式イラストであれ手描きであれ、絶対に衣装のデザインはいつでも確認できるようにしておきましょう。
デザインを覚えたら、次は「構造」を考えよう
デザインを把握したところで次に立ちはだかるのは「どういうパーツでその衣装を構成するか」です。
例えばセーラームーンの衣装であれば、
- ベースは後ろファスナーのレオタード
- スカートはレオタードに縫い付ける=伸びる素材を使用
- 衿は付け衿にして、一部だけレオタードに留めて固定
- リボンはマジックテープ着脱
- リボンの形を保つために中にワイヤーを入れる
など、どのようにその衣装を三次元化するかを先に考えておかなければ型紙を作ることはできません。
構造を考えるコツとして、「本来くっついているはずのパーツでも、別々に着脱するのもアリ」という考え(上記のセーラームーンの衿と身頃のような)を常に念頭に置いておくのがおすすめです。
構造が決まったら、いよいよ「型紙」の準備!
どうやって形を再現するかを決めたら、次はいよいよ型紙を準備しましょう!
(※本来は布の厚みによって少し型紙の形が変わるので先に布を買うのですが、初めの内は用尺(必要な布の長さ)が分からないので先に型紙を作る設定にしています)
購入した本や雑誌の付録の型紙や、ネットでDLできる型紙をベースにして、イメージ通りの形に改造していきましょう。
似たような型紙があってどれがいいか分からない場合は、服の種類(ワンピースかジャケットか)と身頃のシルエットが作りたい衣装に近いかどうかで型紙を優先的に選ぶのが個人的にはおすすめです。
丈の長さは自分の好きに伸ばしたり詰めたりしてしまってOKですし、衿や袖はイメージと違うのであれば別の型紙の衿の形をマネして改造してしまいましょう。
型紙の改造はこちら↓の記事を参考にしてみて下さい。
型紙が完成したらいざ、布を購入しましょう!
自分のイメージにあわせて「布を調達」しよう
買い物に出かける前に、まずは買いたい布をリストアップしていきましょう。
- 色
- 素材(綿、サテン、レザー、ファーなど)
- 用尺(必要な布の長さ)
布を買う時は、最低でも以上の3点は頭に入れておきましょう。慣れてくると無意識に「こういう布かな……」とイメージできるようになりますが、初心者の内はメモするのがおすすめです。
用尺は布幅にもよります。布は半分に折って幅45~70cmのものが多いので、大体50cmと仮定して型紙を並べてみると大体の用尺が分かります。(布は半分に折った状態で使用・裁断します)

こんな感じで、大体の長さをメモしておきましょう。接着芯が必要な場合も、同じように接着芯用の型紙を用意して用尺を求めておいて下さいね。
関東にお住まいでしたら、布は日暮里繊維街での調達がおすすめです。
布を準備することができたら、次はいよいよ衣装製作が始まります!
裁断したらいざ縫合!……の前に「接着芯貼り」と「模様入れ」
さて、長い前座を経てようやくコスプレ衣装作りらしい作業が始まります。
材料が揃ったらすべきことはまず「生地にアイロンをかける」「布を裁断する」ですが、このあたりは買った本を参考にするのが早い上に分かりやすいので割愛します。
裁断した生地に行うのは「接着芯を貼る」「模様を入れる」です。
接着芯の貼り方も参考書に書いてあると思いますが、芯貼りは結構忘れやすいので(私だけでしょうか)初心者の内に「芯はこのタイミングで貼る!」と覚えておいて欲しくてポイントとして取り上げてみました。
「模様を入れる」については人によってやり方は様々ですが、個人的に模様入れは衣装として形になる前に入れてしまうのがおすすめです。
切り替え線をまたいで模様を繋げたい場合(袖と肩の模様など)は縫い合わせた後がよいですが、パーツをまたがない場合や、模様の繋がりが重要でない場合は圧倒的に縫合前の方が楽です。
「縫合前じゃどうしても位置の感覚が掴めない!」という場合は後から模様入れをするしかありませんが、立体になった後に模様入れをすると事故が起きやすい上に修復も面倒になるので是非先に模様入れできるようになることを推奨します。
芯貼りや模様入れが済んだら、次こそパーツを縫い合わせて衣装を立体にしていきましょう!
構造を頭に浮かべながら縫い合わせていく
ある程度型紙に手を加えているとは言え、組み立てる順序は本や型紙に付属している説明書通りでもそこまで大きな問題は発生しないはずです。(どういう改造をしているかによりますが……)
基本的には本や型紙付属の作り方通りに作っていきましょう。パーツとパーツを縫い合わせたらアイロンで縫い代を割る……などのテクニックも本を読んでチェックしておいて下さいね。
初めて衣装を作るとなると、途中で「絶対こんなのムリだからもういい、コスプレやめる」と投げ出したくなることもあるかもしれませんが(私だけでしょうか)、そんな時はムリに続けず一日くらい放置して休んでみて下さい。
時間を置いて冷静になると意外とすんなり解決するので、常にニュートラルな状態でコスプレ衣装製作に挑めるように調整をしてみて下さいね。わかんなくなると本当にストレスマッハなので。
さて、本当の初心者の方に向けてざっくりと衣装製作の流れを紹介してきましたが、コスプレ衣装製作がどんなものが予想はつきましたでしょうか。
「そんな適当な説明じゃわかんねえ」という方がほとんどと思いますので、プラスアルファでもう少し解説を追加してみます。
衣装製作で行き詰まった!こんな時はどうすればいい?
コスプレ衣装製作と一言でいうとまるで一つの作業かのようですが、私の感覚では「全然関係ない作業の集大成」みたいな感じです。
大まかな流れを説明したものの、一つ一つの工程はどこまででも掘り下げられてしまうもの=正直全部説明不足なので、この項目では「恐らく初心者さんが躓くポイント」をピックアップしてみたいと思います。
Q1. こんな構造の服、三次元化できない!
わかる、わかるゾ~。筆者も長いことコスプレ衣装を作っていますが、「布がそんな形を保てるわけねーだろ」「そのマントどこについてんだよ」「その襷ゴムだろ」みたいな衣装ばっかりでよく大暴れしてます。
もしどうやって立体化したらよいか分からない時は、
- 素材を見直す(伸びる素材、軽い素材を検討)
- 別パーツにする(本来繋がっている部分を後付けする)
- 他のコスプレイヤーさんの衣装をよく観察する
- 紙で1/5サイズの型紙を作って、組立てながら改造する
などなど、とにかく頭を柔らかくして、「服を作る」という意識を捨てて「工作をしている」と思いながらアイディア出しをすることをおすすめします。
もしどうしても何も思い付かない、という場合は問い合わせページから私に相談して下さっても構いません。お力になれるか分かりませんが……。
Q2. 型紙の改造ってどうやるの?
ベースとなる型紙を別の大きい紙(ハトロン紙がおすすめ)に写し、加筆していきます。
ざっくりとした型紙改造の方法でよければ、こちら↓の記事を参考にしてみて下さい。
「裾を長くしたい」「フレアの分量を減らしたい」「衿はこっちの型紙を使いたい」など、様々なパターンをご紹介したいのですがスペースがないので、リスエストがあれば個別に記事にしていこうと思います。
Q3. どんな布が正解なのか分からない……
ないです! 正解はないで~~す! 設定資料集に布の種類まで指定してあるキャラクターはなかなかいませんよね。つまり全部自由です。
コスプレ衣装作りも同人誌みたいなものです。自分が「こういうのいいな」と思ったものを現物化するアソビです。自分がいいと思った布を使用しましょう。
リアリティを求める場合は現実の服を参考にするのがおすすめです。
- スーツ……ウール素材、少し厚地めの生地
- サッカユニフォーム……ジャージ素材、ニット系(Tシャツみたいな生地)
- コート……厚地のウールなど
あくまで目安なので、どんな布を使用してもOKです。私はカーテン生地で貴族服をよく作ってますし、この間は帆布でスーツ作りました。(後者は事故ったのでおすすめしません)
ちなみにトガった布を使うと「その衣装にそんな布使うわけないでしょ(笑)」「その時代にそんな布あるわけないじゃん(笑)」みたいなジャッジ下してくるトンチキレイヤーがいますが全無視でOKです。
別に衣装再現グランプリでもなんでもないコスプレにおいて「正しい」とかないです。設定資料集に「麒麟の毛を織って作られた布」って書いてあったらおめー麒麟捕まえてくんのか? という話です。
Q4. 理想の模様の布がない場合は?
全部自分で模様を入れましょう。残念ながらこれ一択です。
生地にイラストデータを印刷してくれるサービスはありますが、いかんせん高いので趣味のコスプレに使えるのは貴族だけです。
シンプルな線ストライプくらいだったらすぐできます。ストライプ幅が1cm以上になると多少手間が増えますがそんなものは誤算範囲です。書いてもいいですし、バイアスを縫い付けてもOKです。
多色チェックはめちゃめちゃ大変なので悪魔に魂を売ってでも布を探してきたいところですが、最悪書けます。大丈夫です。
コスプレ衣装製作向けの模様入れのやり方をこちらの記事にまとめました。よろしければ参考にして頂ければと思います。
まとめ
- 本を買うなら「今すぐ使いたい型紙が付属している」「完成図の写真がある」ものにする
- コスプレ衣装製作は、デザイン把握、構造発案などの前準備を大切に!
- コスプレ衣装に正解はないので、頭をやわらかく、自由に発想してみて下さい
以上、初心者コスプレイヤーさんの参考になる本や、コスプレ衣装の大まかな作り方の流れなどをまとめてみました。
自分が初心者だった頃のことを思い出したらつい力が入ってしまいとんでもない長さの記事になってしまいました。
コスプレ衣装製作は簡単ではありませんが、積み重なる問題も一つずつ解決していけばその内衣装が完成しますので、心の余裕がある時に是非チャレンジしてみて下さいね。